聖岳・光岳(ひじりだけ・てかりだけ)
◆ 山行記録
山行概要
報告概要 南アルプスの百名山である聖岳(3,013m)、光岳(2,591m)に行ってきました。
山行日 2017年8月11日(金)~15日(火)
小聖岳から聖岳
天気 8月11日 曇り、微風
8月12日 曇り時々晴れ後雨、微風
8月13日 曇りのち雨、のち時々晴れのち雨、微風
8月14日 曇り、微風
8月15日 曇りのち時々雨、微風
企画 個人企画
装備 12kg
同行者 単独行
コース
概要
【第1日目】
椹島→聖岳登山口→聖沢吊橋→造林小屋跡→乗越→岩頭滝見台→聖平小屋(テント泊)
【第2日目】
聖平小屋→薊畑→小聖岳→前聖岳→小聖岳→薊畑→南岳→上河内岳の肩→茶臼小屋(テント泊)
【第3日目】
茶臼小屋→茶臼岳→喜望峰→仁田岳→喜望峰→易老岳→光岳小屋→光岳→光岳小屋→易老岳→喜望峰→茶臼岳→茶臼小屋(テント泊)
【第4日目】
茶臼小屋→横窪沢小屋→ウソッコ沢小屋→ヤレヤレ峠→茶臼岳登山口

行動記録
【8/11(金)晴れ、微風】
自宅(6:35)==相模原相川IC(9:15)==寒川北IC(9:15)==厚木IC(10:30)==新静岡IC(10:45)==畑薙ダム臨時駐車場(15:28,15:45)==椹島(16:40)
【8/12(土)曇り、微風】
椹島ロッジ(6:15)==聖岳登山口(6:30)--0:40--出会所小屋跡(7:03)--1:00--聖沢吊橋(7:42,7:50)--1:30--造林小屋跡(9:20) --0:40--乗越(10:00)--0:30--吊橋(10:30)--0:50--岩頭滝見台(11:20,11:45)--1:25--聖平小屋(13:10)
【8/13(日)曇り、微風】
聖平小屋(5:40)--0:07--分岐(5:47)--0:20--薊畑(6:07,6:15)--0:50--小聖岳(7:05)--1:05--前聖岳(8:10,8:20)--0:50--小聖岳(9:10,9:15)--0:30--薊畑(9:45,10:00)--1:30--岩頭(11:30)--0:32--南岳(12:02,12:10)--0:35--上河内岳の肩(12:45)--0:20--奇岩竹内門(13:05,13:10)--0:40--茶臼小屋分岐(13:50)--0:10--茶臼小屋(14:00)
【8/14(月)曇り、微風】
茶臼小屋(5:15)--0:33--茶臼岳(5:48,5:50)--0:30--喜望峰(6:21,6:25)--0:13--仁田岳(6:38,6:45)--0:15--喜望峰(7:00)--1:03--易老岳(8:03,8:15)--0:45-- 三吉平(9:00-9:05)--0:46--静高平(9:51,9:55)--0:14--光岳小屋(10:09,10:40)--0:12--光岳(10:52)--0:09--光石(11:01)--0:11--光岳(11:12)--0:13-- 光岳小屋(11:25)--0:13--静高平(11:38,11:40)--0:36--三吉平(12:16,12:20)--0:58--易老岳(13:18,13:25)--1:28--喜望峰(14:53)--0:48--茶臼岳(15:41)--1:03-- 茶臼小屋分岐(16:01)--0:09--茶臼小屋(16:10)
【8/15(火)曇り、微風】
茶臼小屋(6:10)--1:00--横窪沢小屋(7:10,7:50)--1:00--吊り橋(8:50)--1:00--ウソッコ沢小屋(8:50,8:55) --0:50--吊橋➀(9:07)--0:20--吊り橋②(9:21)--0:08--吊り橋③(9:29)--0:05--吊り橋④(9:34)--0:05--ヤレヤレ峠(9:34)--0:05--畑薙大吊橋(10:32,10:37) --0:05--バス停留所(10:45)==夏季臨時駐車場(11:15)

夏季臨時駐車場(11:20)==赤石温泉白樺荘(11:40,12:30)==新静岡IC(15:30)==相模原相川IC(19:00)==自宅(20:00)

行程図

国土地理院地図より作成

天気図
【8/11(金)】 日の出 5:03, 日の入り 18:40  曇り、27.2/25.3℃、湿度 81%、北東 4m/s、降水量 0.0.mm
   
【8/12(土)】 日の出 5:04, 日の入り 18:39  晴れ、30.4/23.7℃、湿度 73%、東南東 3m/s、降水量 0.0.mm
   
【8/13(日)】 日の出 5:05, 日の入り 18:37  晴れ、30.6/25.7℃、湿度 73%、南 3m/s、降水量 0.0.mm
   
【8/14(月)】 日の出 5:05, 日の入り 18:36  曇り、30.0/24.6℃、湿度 74%、南南東 3m/s、降水量 0.0.mm
   
【8/15(火)】 日の出 5:06, 日の入り 18:35  曇り、27.1/25.2℃、湿度 78%、東南東 3m/s、降水量 0.0.mm
   
Yahoo!天気情報 過去の天気より転載 @静岡県中部(静岡)

◆ 山行資料
アプローチメモ
交通手段 ・圏央道      相模原愛川IC→寒川北IC:   680円(ETC休日割引)
・東名・第2東名  厚木IC→新静岡IC:     2,250円(ETC休日割引)
・第2東名 圏央道 新静岡IC→相模原愛川IC:  3,610円
温泉 市営赤石温泉白樺荘:  510円

◆ 日誌と写真
行動日誌
 例年、夏休みは連泊して百名山を極めることにしているが、今年は南アルプスを狙うことにした。南アルプスは4年前に荒川三山を制覇したが、南アルプスの奥深い雄大な景色が忘れられず、また赤石岳からみた聖岳も気になっていた。そこで、聖岳を狙うこととし、ついでに出来れば光岳も目標に入れることとした。今年はお盆休みしか休みが取れないので、窮屈な小屋どまりを避けて、今年もテント担いで登ることとした。
 さて計画してみると、聖岳を登るには長野県側の易老渡、西沢から登るコースと静岡県側の椹島から登るコースがある。聖岳に光岳も入れるとなると長野県側が効率は良いが、長野県側は最近の大雨で崖崩れのため林道が通行不能、易老渡までは入れず、手前のゲートまでである。そのゲートから易老渡まで約1時間半のロード歩き、それから1,500m以上の登りとなる過酷な状況である。
 一方静岡県側はお馴染みの椹島をベースにして、そこから30分ほど歩くと聖岳登山口、そこから聖平小屋まで約6時間、1,000mの登りである。しかし、椹島を起点とすると畑薙ダム臨時駐車場に車を駐車するのであるが、光岳まで行くと、また茶臼岳まで戻ってきて下山、畑薙大吊橋を渡って畑薙ダム臨時駐車場まで2時間の林道歩きが強いられる。どちらにしろ、テントを担いだ山行にしてはキツイものとなる。
 結局、長野県側の交通が不便なので、アプローチが比較的容易な静岡県側からアプローチすることとする。それに天気が悪そうなので、柔軟に対応できるルートとしておきたいことも理由もあった。
 それから日程については天候を最優先で考えているので、またテント泊ということで、いつものメンバーにはお誘いもあまりしなかった。よって、単独行になるので、万一に備えて今回初めて山岳保険に入った。モンベルの「野あそび保険」というもので、雪(ピッケル)とか岩など危険を伴わない山行が対象で保険料は3泊4日で250円であった。
【8/11(金) 曇り、微風】
 今年のお盆休みは8月11日の土曜日から始まる。それに8月14日は平日であるが、休む人が多いので11日に移動する旅行者が多い。そのせいか、東名高速は大渋滞。以前にお盆の時期に南アルプスに行った時は朝の6時頃出かけてお昼ごろには畑薙ダムについていたので、その感覚で今回も朝の6時に家を出たのであるが、高速道路に入ってからすぐに渋滞につかまり、それも全然動かない。そのうち、トイレに行きたくなったが、次のPAまでは予想で2時間とあったので、そこまでは到底待てず、やむなく途中の寒川北ICで下りてセブンイレブンのトイレ休憩した。その後、すぐに厚木ICから高速道路に入るもなおも渋滞、またまたトイレに行きたくなり、次のPAでトイレ休憩。そのうち御殿場を過ぎたあたりからやっと走れるようになった。
 新静岡ICを下りて井川方面に向かうが、前に通った時は道幅が狭く、すれ違いに気を使った記憶がある。今回もそれを懸念していたが以前とは違う道をナビが選択してくれたので、少々ましな道路であった。
 それでも一部狭くなってはいるし、峠を越えるあたりは一面霧の中、対向車が来ないかひやひやであった。
 ようやく山を越えて井川の村に到着。ここからは道路も対向車線がしっかりあるし、勾配もない。ただ時刻は3時を過ぎていたので、椹島に行くマイクロバスの時刻が気になりだした。畑薙ダムの臨時駐車所に着いたのが3時28分、駐車場入口のおばちゃんから「椹島に行くの」と声をかけられ、「行く」と答えると「バスを待ってもらうから早く準備してこい」という。そこで慌てて駐車して服を着替え、荷物のすばやく整理し、靴紐も結ばずマイクロバスに行くと車内は登山客でほぼ満員。聞くところによると3時30分発の最終便だそうだ。おばちゃんから「後に続く車はなかったの」と聞くので「ないよ」と答えてやっと出発。3時45分であった。誠に皆さんを待たして申し訳ない。マイクロバスでは運転手の隣の席に座らせてもらい、時々運転手と話しした。今年は天気が悪く雨で椹島までの林道も崖崩れで石ころが道路に転がっているとのこと。運ちゃんによれば、その石でパンクしないか心配だとのこと。その場合、「歩いてもらうよ」ということであった。確かに窓の外をみると山肌があらわになった箇所がいたるところ、見受けられるし、畑薙ダム湖はほぼ満水状態、そこにはたくさんの流木が浮いていた。途中、「畑薙大吊橋」や笊ヶ岳に行く「中の宿吊橋」、赤石ダムや聖岳登山口のところで乗客に説明、特に「畑薙大吊橋」については以前は板敷きであったが最近鉄板に代えたとのことであった。
 約1時間ほどで椹島に到着。さっそくロッジ宿泊の手続きをし、指定された部屋に行くとなんか周りは女性ばかり、部屋を間違えたかなと思ったが、近くのおばちゃんから相部屋だよということで安心する。もう少し見渡すと若夫婦もいた。それにしても最近の登山は女性パワーを感じる今日この頃である。
 部屋に荷物をおいて夕食までのひと時、椹島を散策。前に来たので、かって知ったところであるが、それにしても今日はどんよりした曇り空である。テント場にはなぜかインディアンのテントが2張り張ってあった。

広々とした椹島テントサイト

椹島ロッジの夕食
 夕食は以前と同じようなメニューであった。朝飯の代わりに弁当を注文しておいたので、夕食後それを受け取ったらもうすることなし。部屋に帰って、本棚から借りてきた本を読むもすぐに疲れて眠りについた。
【8/12(土) 晴れ時々曇り、微風】
 5時頃布団から起きるとあたりの登山客はすでに布団を片付け人もまばら。 朝食は5時からということで食べに行ったのでしょう。こちらは朝食は頼んでいないので、弁当を半分朝食として食べる。食堂の片隅で朝食を食べている登山客に迷惑にならなよう弁当を半分食べる。弁当はおにぎりかと思いきや稲荷寿司と太鼓巻であった。やはり朝5時から全部は食べれないので半分残し、今日のランチとする。

椹島でマイクロバスを待つ

聖岳登山口、皆さんマイクロバス組
 聖岳登山口までは計画では歩くつもりであったが、ちょうどマイクロバスが6時15分に出るとのことで、しかも無料とのことであった。椹島からコースタイム50分であるが、ここはやはりバスに乗ることとしてバスを待つ。その間、大宮から来た単独行のおじさんと話す。バスの中でも隣同士となった。
 バスはほぼ満席、要するに登山口まで歩くという人はいない。やはりバスがあるのに歩くという選択はないようである。隣同士になった方に登山口で写真を撮ってもらって登り出す。バスで下りたご一行様もそれぞれ登り出す。
 樹林帯の中をしばらくは急登であるがジグザクの道なので、マイペースで順調に登り出す。そのうち、傾斜が緩やかになり、順調に進むも途中鉄の橋が上から大きな石でもあったのかひん曲げられている箇所を通る。一応ロープなど張られて整備されているが、ザックを担いでいるので慎重に進む。そのうち、聖沢吊橋に到着すると、朝のマイクロバスご一行様のうちの何人かが休憩していた。あの大宮から来た人ともこのあたりまでほぼ同じペースであった。
 聖沢吊橋は特に緊張もしなかったが、渡った後は急な登りで地図で目標地点の「造林小屋跡」までコースタイムが1時間10分とあるがなかなか着かない。いくらか坂が緩くなったところに小屋跡があるのではないかとそれを目指して進むが小屋らしいものにはお目にかかれない。とっくに1時間以上歩いたのでさすがに休憩をとることとした。スマホのGPS登山地図で現在地を確認すると「造林小屋跡」は過ぎていた。休憩をとったのち、次の目標である「乗越」までコースタイムで1時間とあったが、30~40分ほどで見晴らしの良い峠みたいなところを通過。なんの標識もないので、もう少ししたらちゃんとした「乗越」があるだろうと思うも樹林帯のままなので、やはり1時間ほど歩いたので休憩する。スマホのGPS登山地図で現在地を確認するとこれまた「乗越」は過ぎていた。ということで、コースタイムを目安に休憩しようと思っていたが、意外とピッチが良いことに気をよくする。

大きな石が当たったのか崩れかけている

聖沢吊橋
 「乗越」を過ぎてからは登山道は斜面を横切るようになるが、途中にまたもや吊り橋、また雨で崩れたガレ場を横切る。そして、お花畑を通り過ぎたあたりから再度少々登りになる。ザックを担いでの登りで疲れが溜まってきている。また腹も減って力が出ない。やっと「岩頭滝見台」に到着し、そこで朝残してきた弁当を食べることとする。そこはちょっとした岩場になっており、先に進むと聖沢をはさんだ向こう側の山肌に大きな滝が2つあるのが眺められる。バスで一緒だった登山者なのか2-3人が休憩していた。また弁当を食べて時、隣に座ったおっさんと話ししていたところ、関西から来たという。話によれば、朝のバスで隣に座った埼玉の人と同じく聖岳から赤石岳を目指すとのことであった。

2番目の吊橋、奥の方が傾いている

岩頭滝見台
 「岩頭滝見台」から聖岳を望むも残念ながら雲が覆っっていた。
 弁当を食べた後は、しばらく関西から着たおっさんと一緒に登るも彼は写真に凝っているらしく、時々立ち止まっては写真を撮っていた。こちらはデカザックを担いでいるのでマイペースでどんどん進む。そのうちぬかるんだ道になり、なだらかになっていたが、疲れが溜まってきたので、小さな沢に鉄製の橋を渡ったところで休憩。そしてこのような鉄製の橋を3つほど渡ったところでやっと聖沢小屋に到着した。小屋ではバスで隣り合った埼玉のおじさんが出迎えてくれた。時刻は13時09分。登山口出発が6時30分だったので、6時間40分、コースタイムで6時間10分のところであるが、昼食の休憩などを入れていることと、またザックを担いでいることもありよしとする。
 さっそくテントの受付を済ませて、名物のフルーツポンチを食べる。疲れた身体にフルーツポンチの味が染みわたる。休憩したのち、さっそくテント張りに取り掛かろうとすると埼玉のおじさんがテント張るところを見てみたいとおっしゃるので、テント張りを手伝ってもらった。テントを張り終わると、こちらは次に缶ビールで乾杯となるが、埼玉のおじさん、ビールは飲まないとのことであったが、しばらくテントの前で雑談して分かれた。
 そうしたら、次に岩頭滝見台であった関西のおじさんが紙パックの「黒霧島」を持って、テント場に現れた。彼も小屋泊まりであるが、酒を呑みに来るのも山に来る目的のひとつということで、話し相手を探していたようである。さっそく「黒霧島」を少々おすそ分けしてもらって歓談した。このおじさん呑んで話すのが好きらしく、いろいろ人生話までしてくれた。最初大手スーパーに勤めていたが、その後趣味を活かして独立し商売を始めたが、やはり趣味と商売とは違うことでうまくいかず、今はまた会社勤めしているということであった。それまで経験したいろいろな流通業界の裏話を聞かしてくれて結構面白かった。またお互い関西人同士、なぜか気があった。

岩頭滝見台より聖岳を望む

聖平小屋前のテント場
 その彼と話しているうちにぽつぽつと雨が降ってきたので、彼も小屋に引き上げる。こちらは自炊なので、さっそく夕食に取り掛かる。夕食は軽量化のため、期限切れのアルファ米とレトルトカレーであるが、疲れていたせいかあまり食欲がすすまなかった。
 飯も食ったしその後はのんびり山で音楽でも聞くかとウォークマンを取り出す。山で音楽を聴くのも、ひとつの楽しみであり、今回は神山純一の12星座のいう曲をアマゾンでダウンロードして持ってきた。が、しかしあいにくの天気で星なぞは眺めそうもない。テントの中で雨音を聞きながらでは雰囲気も出ない。そのうち、夜中には本降りとなって狭いテントの中で雨音がやかましい。この分だと明日は様子見て聖岳に登ったら、もうさっさと帰ろうという気になっていた。
【8/13(日) 曇りのち雨、微風】
 翌朝起きてみると曇っているが雨は降っていない。しばらく降りそうもないので、テントを片付けてとにかく聖岳を登ることとする。雨に濡れたテントはちゃんと畳むと土が付いてしまうので、そのままくるめてザックの底に押し込む。後は、ポールやコンロなどとにかくザックに積み込んで聖平を5時40分に出発した。
 小屋を過ぎると聖平という開けたところに出た。ちょっとしたお花畑となっていて、光岳方面の稜線が望めるが厚い雲に覆われている。また聖岳方面はなにも見えず。そのまま稜線に沿って登っていくと薊畑に出る。
 ここでザックをデポする。ザックの上蓋を外しこれにカッパとペットボトルを入れてウエストポーチにして聖岳山頂を目指す。

南アルプス稜線の分岐、光岳方面はガス

お花畑
 薊畑には同じようにデカザックが3~4個置かれていた。
 薊畑からは樹林帯の道を登っていく。ザックがない分、身が軽い。そのうち小聖岳に到着。相変わらず雲が多いがかすかに青空も見える。下りてくる人に尋ねたら、景色は望めたとのことである。それを期待してひたすら登る。

薊畑、西沢渡は向こう側の谷底

ガスの中の小聖岳
 ガスが晴れて一瞬聖岳が見えたが、小聖岳からヤセ尾根越しに見えた聖岳は堂々としている。果たして登れるのであろうか、という気になる。一旦下った鞍部からザレた聖岳への登りになるが、ひたすら登り。GPSで現在地を確認するも地図で見る限り山頂は近いが、なかなか着かない。山頂まで休憩を我慢してひたすら登っていたがそのうち疲れて休憩。その後、気を取り直して登っていくとようやく人声が聞こえてきて山頂に到着した。山頂はやはりガスに包まれていた。疲れた身体を休みながら晴れるのを待ったが一瞬真上に青空が見えたと思ったら、瞬く間にガスに包まれてしまい、周りの山並みなどとても望めそうにない。よって、奥聖岳に行くのも無駄なので、そのまま下山することとした。

聖岳制覇、なにも見えず

聖岳山頂、真上が一瞬青空
 空荷での下山は気持ちも軽いが、途中デカザックを背負って登ってくる登山者を見ると気の毒になってくる。相変わらずガスの中の小聖岳を経由して薊畑に戻ってくると2~3人の登山者が休憩していた。こちらも腹が減ったので、コンビニで買ったパンを食べる。
 百名山である聖岳を制覇したことだし、ここで聖平小屋経由帰る選択もあるが、行く手の稜線をみると登山客もちらほら登って行っているので、とりあえず茶臼小屋まで進むこととした。稜線歩きだし、昨日のような登りはもうないだろうと思って、南下するも南岳までは思ったより少々遠かった。2人連れの女性も前を歩いていたが追いつけなかった。やっと南岳に到着し、休憩していると突然雨が降ってきた。カッパの上着だけ着て、そのまま稜線歩きをしていると結構本降りになり、登山ズボンもびしょ濡れになってきた。

薊畑に戻って来ました

南岳、ここから雨になる、カッパ着る
 雨が降っていると雷鳥に出会う。親子連れであった。カッパからカメラを取り出しなんとか撮影。上河内岳の肩に着くも雨は止まず。当然上河内岳はパスしてひたすら稜線を南下する。雨の中カッパを着て歩いていると、気分もしょぼくれてくる。明日は茶臼小屋から下りてしまおうという気になっていた。

雷鳥、天気が悪いとお目にかかる

ガスガスの上河内岳の肩
 途中奇岩竹内門という箇所で休憩。そこを過ぎるとちょっとした草原の広場を通り過ぎる。地図によると亀甲状土があるとのこと。雨も弱まり、あたりは霧に包まれどこかに森の精がいるような雰囲気である。

奇岩竹内門

草原
 草原を過ぎて確かもう登りもないはずと思いながらもザレたところを登っていく。登りとなるとペースはガクンと落ちる。茶臼岳を登るのかと思いきや茶臼小屋分岐まで1分の標識にがぜん元気になる。そのうち開けたところに出て、そこには茶臼小屋への分岐を示す道標が立っていた。さっそく下るとだんだん視界が開けて、谷の方に傾斜に立つ茶臼小屋とカラフルなテントが見えてきた。

茶臼小屋分岐まで1分の標識

茶臼小屋の分岐

茶臼小屋が見えてきました

茶臼小屋からの眺め、青空が出てきた
 ここのテント場は傾斜地をなんとか切り開いたという感じで平たんな場所はない。小屋の兄さんに尋ねたらトイレの前でもいいかと聞くので、これまた私にとっては願ってもいない場所である。夜中トイレに行くのに近い方が頻尿気味の私にとって好都合である。そこにいくと木の台もあるではないか。さっそくテントを張ってカッパやザックカバーを乾かして缶ビールを呑んでいると、隣で若いカップルがテントを張り出した。そのカップルのテントはなぜか六角形で、どうも指定された場所でははみ出してしまって建てることが出来ない。気になったので、声をかけると、小屋の人からもともと上の方の場所をあてがわれていたが、とても狭くどうしてもテントが張れないのでここに移ってきたとのこと。それで、私に出来ればその場所に移ってもらって、今私のテントが張ってある場所を使わしてくれないかとのこと。それで、その場所に行ってみたがやはり狭く私のテントも張れなくはないが、すでにビールを呑んでしまった身体には、これからテントを片付け少々上の場所に移動するのも億劫なので、私のテント場所と今そのカップルが張ろうとしている場所を交換することを提案。この提案を先方が受け入れてくれたので、さっそっくテントを張ったまま、横に移動。そして若カップルは六角形のテントを無事張り終えることが出来た。
 その後、そのカップルとしばらく話していたが、本日畑薙大吊橋を渡って登ってきたとのこと。吊り橋はどうだったと聞くと女性の方は、「揺れるのよ、長くて怖かった。」とか「踏板が朽ちている吊り橋もあるのよ。」とのこと。こちらもここまで来てしまった以上、吊り橋を渡って下山するほかはない。覚悟しておくこととする。また明日は光岳をここからピストンすると言う。それは聖岳下山するときに頭の中でしきりに考えていたが、空荷であればそれもありかなという気になっていた。ここで、このカップルからたやすくピストンと言ってくれたので、こちらもその気になる。そうだ、時間を決めて無理だったら途中で引き返すことにしたらいい。

とりあえずテントを立て、カッパ、ザックカバーを乾かす

テントの前はマツムシソウのお花畑
 せっかく聖岳を制覇し、ここまで来たので光岳まで制覇しておきたい。幸い雨も上がって青空も見えていたんで、すっかりその気になった。さっそく明日の準備をしながら、今日もまずいアルファ米とレトルトカレーの夕食を食べた。後は明日の天気次第。幸いテント場から見る限り青空は見えていた。
【8/14(月) 曇り、微風】
 朝4時には目を覚ましていたが5時に起床。曇ってはいるが雨は降りそうもない。お隣のカップルはすでに出発しようとしていた。こちらも朝食を簡単に済ませ5時15分に出発。
 稜線に出ると昨日よりはガスはなくあたりの山々まで望める。茶臼岳に登っていく途中で振り返ると小河内岳、それに聖岳も望める。雲がたなびいていて幻想的である。

稜線に出ると視界が開けていた

茶臼岳を登る途中で聖岳方面を振り返る
 茶臼岳山頂で二人連れのおばさんに写真を撮ってもらう。また茶臼小屋で見かけなかった若い人は易老岳から登ってきたという。易老岳に小屋はないはずだが、テントを張ってたと言っていた。
 空荷なので、下山は快調に飛ばす。途中仁田池から木道もあり、また登りもあまり続かず疲れも感じることもなくどんどん進む。

茶臼岳山頂より聖岳方面

茶臼岳からこれから行く稜線
 最初の関門である「喜望峰」に到着。樹林帯の中で何も望めず。この稜線は南アルプスらしい森の雰囲気が味わえる縦走路とある。

喜望峰は樹林帯の中

喜望峰から道を間違え仁田岳に向かう
 順調に飛ばしてきたので、さらに稜線を進んでいると思ったらだんだん登っていて周りも見晴らしが良くなる。しばらくして道を間違え仁田岳に登っていることに気づく。茶臼小屋から一緒のキスリングを担いだおじさん、それに女性パーティもついてくる。彼らに道を間違えたと言ったら、仁田岳に立ち寄るために登ってきているとのことであった。確かに仁田岳山頂から360度の眺め、遠くの方には富士山も見える。これをパスするのは惜しい。キスリングおじさんは私と同じく今日は光岳往復とこともなく答える。女性パーティは光岳小屋泊まりらしい。

仁田岳山頂にて

遠くの方に富士山
 喜望峰に戻って今度はちゃんと道標を見て次の目標である易老岳に向かう。天気もまずまずであり、雨も降りそうもない。ウエストポーチだけであるが、朝慌てて防寒のためフリースも持ってきたしまったので、ペットボトルがポーチに入らず仕方なしにビニール袋に入れて手に持っての山行である。この気温だとたとえ雨が降ったとしてもフリースは不要だ。稜線上での低体温症を気にし過ぎていたかもしれない。
 易老岳に到着したが、やはりここも樹林帯の中。樹林帯の中の山頂とはいえ標高は2354mあるので、ちょっとした登りであった。途中、ワンゲル部らしい若者のグループがいた。また樹林帯の中にはテントが張られていた。確かに易老渡から急坂を登ってくるとここでテントを張るのも気持ちは分かる。

樹林帯の中の易老岳山頂

ゴーロの沢筋を上ると静高平、向こうは青空
 易老岳を下っていくと鞍部と思われるところが三吉平である。樹林帯の中である。ここからゴーロの谷筋を登っていく。空荷なのでなんとかペースを落とすことなく岩場の道を登っているが、なかなかの登りである。これをザック担いで登るにはきつい。傾斜が緩くなり行き先をみると青空が見えてきた。登りきると静高平というところに着く。高山植物が咲いていて、また小川が流れており水も汲めるようになっている。そこから先は草原の中に木道が敷かれ光岳小屋に続いている。これまでの樹林帯の稜線とはうって変わって開けて明るい。
 やっとのことで光岳小屋に到着。ここで自分へのご褒美にコーラを注文して、持ってきたスティックバーを昼食代わりに食べて休憩していると茶臼小屋サイトで隣のテントにいたあのカップルが光岳から下山してきた。やはり若いカップルには追い付けなかった。当たり前だが。こちらも念願の光岳に登る。この光岳、百名山にしては山頂が樹林帯の中で眺望は望めずまったく地味な山である。そのせいか、ここまでくると名前の由来となって光石まで見物することとなる。時間として15分とあるが、これが山頂から急激に下っている。

光岳小屋が見えてきた

光岳山頂
 光石が着いたがこの天気では岩山を登ったところで眺望は期待できないので、まずは見てきたということで写真だけ取って、来た道を引き返す。今度は山頂まで登って光岳小屋まで下ることとなる。小屋に下りる途中、眼前には平たいイザルガ岳が望めた。
 光岳小屋に着くとカップルはすでに出発していて、こちらも茶臼小屋までの帰りを気にして早々と出発する。イザルガ岳はパスしてとにかく帰りを急ぐ。

これが光石

光岳小屋からイザルガ岳
 静高平から三吉平へは下りなので疲れを感じなかったが、易老岳への登りではやはり疲れが溜まっているせいかペースが遅くなる。易老岳を過ぎてから喜望峰までの道のりが長い。やっとのことで喜望峰に到着し、あとは茶臼岳を越えるだけということで安堵の気持ちが湧いてくる。あとひと踏ん張りの茶臼岳を登り峠に下る途中でおばちゃん2人登ってきた。峠に着くとおっさんが一人休んでおり、どうも同じパーティでおばちゃんだけ登っているらしい。峠から下って茶臼小屋に到着、時刻は4時10分、4時には間に合わなかった。しかし朝5時15分に出て、11時間強で帰ってこれた。昭文社の「山と高原地図」によるコースタイムでは往復13時間(往路6時間50分、復路6時間10分)とあるので、2時間近くの短縮である。とにかく雨に合わなかったのが幸いである。
 テント場に到着すると隣のカップルはすでに到着していて夕食の準備をしていた。こちらも缶ビールで乾杯、今日が最後の晩なので、荷物を減らすためにも持ってきた食料を食いつくすことに努める。
【8/15(月) 曇り、途中雨、微風】
 今日は下山するだけなのでのんびり朝5時半起床。テントの外に出ると隣のカップルはすでにテントを撤収していて出発するところであった。聖岳から赤石岳に行くとのことであるが、デカザックを担いであの聖岳を登るのかと思うとご苦労さんと言いたくなる。「お気をつけて」と声をかけるとさっそうと出発していった。こちらも今日は下山し東京まで帰らなければならないのでぼやぼやしてられない。簡単に朝食を済ませてテントを撤収にかかる。テントは濡れていたが、この場所は板敷きなので畳んでザックに押し込む。あたりを見渡すとテントの数もかなり少なくなっていた。6時過ぎに出発。
 茶臼小屋から樹林帯の道を下っていくが、天気は昨日より悪いようで、途中雨が降ってきたのでカッパを着る。長い下りで横窪沢小屋に着いた頃には本降りとなっていた。横窪沢小屋では小屋のおばちゃんから中で休んで行っていいよと声をかけられたので、中で休んでいると食堂ではおばちゃんを始め皆さん、NHKの朝ドラを見入っている。そのドラマを終わってからラムネを注文する。外は雨が本降りとなっている。いつまでも休んでいる訳にはいかないので、カッパの上下を着て外に出る。

さよなら茶臼小屋

雨の中の横窪沢小屋
 横窪沢小屋から横窪峠を少々登って中の段まで斜面をどんどん下る。中の段からも急な下りで、そのうち吊り橋が出てきた。よくみると端の方の板敷きが朽ちている。ここのことを言っていたのか、と思い緊張して渡るがそう危険を感じるほどではない。その後、ウソッコ沢小屋に到着。
 相変わらず雨が降っているので少し休もうかと思い中に入ると、薄暗い小屋の中で一人寝袋で死んだように寝ている人がいた。

板が一部朽ちている吊橋

ウソッコ沢小屋

先の方が少々傾いている

ウソッコ沢小屋から4番目の吊橋

そこらあたりにキノコ

霧にむせぶヤレヤレ峠

最後の畑薙大吊橋

畑薙大吊橋を渡った
 ウソッコ沢小屋から吊り橋を4つほど渡り、最後に畑薙大吊橋に到着。これまで吊り橋を何回も渡ってきたので恐くはなくなっていたが、最後の吊り橋なので覚悟して渡り始める。高所恐怖症の者はできる限り足元の鉄板だけ見て余計なことは考えないことが肝心である。だがここの吊り橋、やたらと長い。真ん中を過ぎたあたり揺れも大きくなるし、また足元を見ているつもりがその下の湖面も目に飛び込んできて倒木が浮遊しているのが分かる。行く先を見ても対岸はまだ遠い。根性でとにかくペースを落とさず進む。やっと渡り終え、緊張がほどける。
 これまで頭の中で気にかかっていたこの畑薙大吊橋を渡り終え、今回の山行はほぼ終了、あとは畑薙ダムまで1時間半かかっても林道をのんびり歩いて帰ればいいだけ、と歩き出すとすぐ近くにバス停留所らしきものがあり、そこに登山客は4~5人待っている。確かマイクロバスは予約しないと乗れないはず、こちらは何も伝えていないので、仕方なく歩きだすとちょうどマイクロバスがやってきた。停留所の登山客は当然乗り込んでいるが、試しに怖そうな顔をした運ちゃんに乗っけてもらえないか尋ねてみた。しばらくバスの車内を見渡して、乗るならカッパを脱げ、と言われ、運ちゃんの気が変わらないように急いでカッパを脱いでバスに乗り込む。ちょうどドア付近の補助椅子がかろうじて空いていた。そこに他の乗客の皆さんに謝りながら座らしてもらった。怖そうな顔をした運ちゃんは何も言わず、さっそく運転席に戻って車を動かす。畑薙ダムに向かうバスの中から、途中林道を歩いているあのキスリングおじさんを見かけた。バスに揺られながら誠にラッキーと思うとともに文明の力に容易に屈する自分がいて少々申し訳ないような気になる。
 バスは畑薙ダムの臨時駐車場に無事到着。運ちゃんにお礼を言ってバスを降りるといつもの受付のおばちゃんが居てお茶を勧められた。のどが渇いていたのか2杯いただく。下山届を出してやっと今回の山行を無事終了したことになる。
 臨時駐車場で自分の車に戻ってさっそく登山靴を履き替える。それから汗を流しに、ここから車で5分ほどの赤石温泉白樺荘に行く。林道を車で下っていると、この林道でも歩いている登山者が2~3人いた。そうか、マイカーでない人は赤石温泉白樺荘まで歩かなばならない。公共交通機関でここに来るとなるとバスの時間も気にしなければならない。
 赤石温泉でゆっくりして食事も済ませて、自宅まで長い道のりを運転して帰る。
感想
 南アルプスは最近の豪雨でいたるところがけ崩れ、登山道も崩れている箇所があり、滑ったらそれこそ谷底へ転落という箇所があった。それに茶臼小屋からの下りは吊り橋がいくつもあり、その極め付けは畑薙大吊橋である。これを渡り切って無事登山終了ということでフィナーレにふさわしい行程であった。また入山時に椹島へ行くバスになんとか間に合ったり、畑薙大吊橋で運よくバスに乗れたことは今回の山行では予期せぬ出来事で誠にラッキーであった。
 これで南アルプスの百名山である3,000級の聖岳、それにアプローチの長い光岳まで制覇出来たことは誠に感慨深い。今回は天気が悪いせいもあり、静岡県側からのアプローチで正解であった。
 これで南アルプスの百名山で残すは塩見岳だけとなった。

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