北海道・斜里岳
◆ 山行記録
山行概要
報告概要 北海道の百名山である斜里岳(1,536m)に行ってきました。
山行日 2015年8月13日(木)
斜里岳に立つ
天気 うす曇り、微風
企画 個人企画
装備 3kg程度(日帰り装備)
同行者 単独行
コース
概要
清岳荘--二股--上二股--分岐--斜里岳--分岐--上二股--熊見峠--二股--清岳荘
行動記録
【8/12(水)曇り、微風】
岩尾別温泉(14:00)==宇登呂(14:30)==清岳荘(16:00)
【8/13(木)曇り、微風】
清岳荘(4:50)--0:20--登山口(5:10)--0:40--二股(5:50)--0:40--上二股(7:20,7:25)--0:30--分岐(7:55,8:00)--0:20--斜里岳(8:20,8:40) --1:15--熊見峠(9:55)--1:30--登山口(11:25)--0:17--清岳荘(11:42)
清岳荘(11:45,12:15)==緑清荘(12:30,13:30)==清里町駅(14:00)==雌阿寒岳温泉(16:00)
行程図
天気図
【8/13(水)】 日の出 4:23, 日の入り 18:32, 曇り 21.8℃/18.9℃, 91%, 東北東 2m/s, 0.0mm
   
Yahoo!天気情報 過去の天気より転載 @紋別地方(紋別)
◆ 山行資料
アプローチメモ
山小屋 清岳荘 素泊まり     ¥2,050
温泉 清里温泉ホテル緑清荘 日帰り入浴  ¥390

◆ 日誌と写真
行動日誌
【8/12(水) 曇り時々晴れ、微風】
 羅臼岳のヒグマ騒動がまだ冷めやらぬまま、次の目的地である斜里岳に向かう。ウトロから清里町まではそんなに遠くではない。 ただ清里町を通り過ぎるとそれこそ車にめったに会わない。 登山口にある清岳荘まではそんなに距離はないのではあるが、天候があまりすっきりしないこと、また舗装道路から未舗装道路になって山裾をどんどん上がっていくのであるが、心細くなる。 道路は未舗装であるがそんなに悪くはない。曲がりくねった道をカーブするたびにまだかまだかと思ううちにやっと広い駐車場が現れた。 車が数台駐車しており、その向こうに立派な清岳荘が見える。その横が斜里岳登山口の標識、それに登山届の台もある。 さて、昨晩は車中泊であったが、ここでは車中泊でもお金が取られるとのことなので、さっそく山荘の受付に行く。 おばちゃんが出てきて、素泊まり2,050円と言われ、小屋の内部もトイレも綺麗なのであっさり車中泊はやめて素泊まりとする。

清岳荘から駐車場を望む

清岳荘から斜里の町方面を望む
 1階に食堂があり、冷蔵庫や電子レンジが置かれており、テーブルとそれに大型テレビまでもある。それにポットにお湯も入っており自由に使ってよいとのこと。 また2階はというときれいな板敷である。毛布もあるようであるが、お金が必要なようで、さっそく寝袋とか食料とか車から運んで、2階に上がると年配のご夫婦が先着していた。 羅臼岳から来たと話するとそのご夫婦は雌阿寒岳から来たとのことで、斜里岳を制覇してから羅臼岳に行くとのこと。 そこで羅臼のヒグマ遭遇を詳しくお話しすると急に羅臼は止めて利尻岳にしようかしら、と急に今度は利尻までどうやっていけるか、何時間かかるのかとこちらに尋ねてくる。 利尻へは、とスマホを屈指するも回答が出てこず、うやむやになったが、1階の食堂でテレビを見ながら一緒に夕食をとる。 こちらはコンビニ弁当に缶ビール、それに簡単なおつまみ程度のみすぼらしい夕食であったが、さすがご夫婦の方は段ボールからトマト、キュウリ、塩辛などいろいろな食材が用意された豪華な夕食の模様で、こちらにトマトとか塩辛とか薦める。 町のスーパーで仕入れてきたそうで、トマトも塩辛もごちそうになったが新鮮でとてもうまかった。 ご夫婦といろいろ話してると先方は浜松から車で来て、気ままに北海道を旅行しているとのこと。 もう定年で仕事もないので、我々みたいに年休の気遣いがないとのこと。ご夫婦で山登りや温泉をのんびり楽しんでいらっしゃるようで誠にうらやましい限りである。
 やがてあたりは夕焼け色に迫り、山荘のベランダから斜里の町明かりがうっすら浮かび上がっていた。
【8/13(木) 晴れのち曇り、微風】
 さて綺麗な小屋でぐっすり寝て4時ごろ起床、1階でお湯をもらってラーメンをすする。 さて準備にとりかかると、いつもの愛用のステンレスカップがどうしても見つからず、失くす訳はないので車かどっかに転がっているのであろうと思い飽きらめて山荘を出るとご夫婦が登山口で待っているではないか。 昨晩ヒグマに出くわすと行けないので一緒に行こうと言ったじゃない、ということで、あわてて待たしてしまったことをお詫びし一緒に出掛けることとした。 私くしとしては、羅臼のヒグマのこともあり、やはり一人よりはグループの方が心強い。

林道終点、ここからが本当の登山口

いくつかの渡渉を経て二股
 登山口で一応登山届を出し、山道に入るが、ほどなくして林道に出てくる。この林道は清岳荘から続く林道であるが、山道はいわばショートカットしていた。 林道をちょっと歩くと林道終点になり、いよいよ斜里岳の沢登りの山道に入る。ここにも熊注意の看板がある。 ここから沢登りとなるが、熊が川のサケを取に来るようには沢とは思えない。この沢はチェサクェトンビ川の上流にあたるが、この名は魚の居ない川という意味だそうだ。 とにかく一応、私が一番若いようなので先頭になる。まっさきに熊に出くわすっていうことか。 それよりもバランスの悪くなった年寄りには沢登りの方が気になる。
 最初は沢に沿った土の登山道をしばらく歩くが、そのうち渡渉箇所が出てくる。最初は渡渉も緊張したが、そのうち次々と渡渉箇所が出てくる。 赤テープやペンキ印に注意して渡渉箇所を間違えなければ問題ない。 斜里岳の岩は鉄分を多く含み、滑りにくいのが特徴でわらじや沢専用靴などを必要としないとあるが、登山靴なので濡れた岩で滑らないよう、またストックをうまく使って沢筋を登っていく。 二股まで渡渉箇所は10箇所以上か、しかしここからがいよいよ滝が現れる本格的な沢登りとなる。

滝が出てくる。この横を登る。

沢沿いの道
 下二股の分岐から沢沿いに進むと、まず水蓮の滝が現れる。そこは高巻きして過ごす。 さらに進むと溶岩流の上を流れるナメ滝の羽衣の滝、そして万丈の滝と続く。ここは滝の脇を登っていくのであるが、鎖がサポートしてくれる。 この先は、滝も流れの幅が小さくなり、階段状の岩場となる。見晴らしの滝、七重の滝、竜神の滝、霊華の滝と続き、やがて沢の傾斜が落ち、流れがみえなくなりやっと上二股に出る。 ここでやっと緊張が解ける。

またまた大きな滝

やっと上二股
 上二股は新道と旧道との分岐で、ここを過ぎると、わずかに水が流れている石ころだらけの道で、ダケカンバ、ミヤマハンノキなどの低木のトンネルで気持ちが良い。

馬の背、稜線に出るもガスの中

ご一緒したご夫婦も山頂へ
 心地よいトンネルの沢道を過ぎると見晴らしが良くなり稜線が見える。稜線に向かってのザレたジグザクの急登となるが、そんなに疲れることなく馬の背に到着。 そこから山頂へは20分足らずであるが、急な登りで少々遅れがちなご夫婦を待ち少々休憩をとってから、いよいよ山頂に向かう。 途中ピークを越えてちょっと下ったところに小さな祠がある。それから少々登って山頂に到着。だが残念ながらガスで何にも見えない。
 清里町の紹介では、「展望にいたっては知床の山並みから国後島、阿寒の山々、大雪山までもが望め、オホーツク海岸へ広がる視野の防風林の景観は道東一と言っていいほど壮大な眺めを提供する」ってあるが、残念ながら眺望はなし。 また大気の状態が不安定という天気予報もあり雷も怖いので、フルーツゼリーをそそくさと食べて記念写真を撮ってすぐに下山する。

熊見峠、ほんとは眺めがいいはず

清岳荘登山口に無事下山
 山頂からは往路を戻るが、ガスで下りる道が分からず少々時間を費やした。 先の天狗岳でも下山方向がなかなか分からなかったことがあるので、こういうガスの中の下山は注意すべきである。
  上二股からは新道の尾根道に入る。登ってきた旧道の沢道は下るには危険とのこと。確かに滝の傍の濡れた岩は登るときはまだしも下るには相当危険であることと思う。 足にかかる体重が登りの時と違うし、手を使うにしても下りの足場が見えなくなる。 さて尾根道に取りつくとほどなくして稜線を下るようになり、あたりもガスが濃くなりそのうち雨粒も当ってくる。 ダケカンバ帯の樹林を少し進むと、龍神の池への標識があったが、天気も悪いのでパスした。 龍神の池は、鉄イオンによって褐鉄鉱床が生まれ「鉄釜」と呼ばれる珍しい自然現象の池のようだが、下りで一緒になった若い方が立ち寄ったので、後で合流した時に尋ねると大したことはないとのことであった。
 ハイマツ帯の尾根道をゆるやかに上がり下がりして熊見峠に出る。ここから斜里岳の山容や下界の景観を十分に楽しめようであるが、ガスは無論、雨も降り出した。 ここからは沢筋の二股まで急な斜面のジグザグ道を下るのであるが、雨でぬれた土の道で滑りそうになり、疲労した足にはこたえる急坂である。 沢の音が聞こえてくるが、なかなか二股に着かない。さらに滑りそうな箇所を通って下りにいい加減いやになったところで、やっと二股に着く。
 ここからは朝と同じ渡渉区間になるが、沢登りになれたせいか、快適に進む。そしてやっと林道に出て無事斜里岳を制覇したことで、ご一緒したご夫婦と喜びを分かち合う。
 清岳荘に下りてくると天気は晴れるってまではいかないものの明るく、登山を終えた人がそれぞれ泥の付いた登山靴を洗ったり濡れたものを干したりしている。 こちらも泥で汚れたスパッツや登山靴、ストックを洗い、さっそく温泉に行く準備をしていると下りで出会った若い人から清里駅まで乗っけて行ってくれ、とのことで気安くOKの返事をする。 さて温泉は、ご夫婦から教えてもらった「緑清荘」に行く。清里駅に行く人も釧路に行く電車の時間が3時過ぎということなので、一緒に「緑清荘」に行く。 ご夫婦の車の後をついて15分程度で着く。この温泉は町営の温泉付き宿泊所になっており、新しいせいかきれいな建物である。 玄関には「東京大学陸上部合宿~箱根駅伝を目指せ~」との看板があった。そうか、大学の合宿所になっているんだ。 車に乗っけた若い人は、北大出身で現在川崎に住んでいるが、今回大学時代の友人と釧路方面を旅行していたとのこと。 大学時代はアウトドアのサークルに入っていて北海道はいろいろ旅したが道東が一番とのことである。 山にも詳しそうで、斜里岳は2回目だそうで、今日は天気が崩れるので旧道を登らず景色を楽しむために、わざわざ新道で登ってきたとのこと。 我々は旧道の沢道で景色はまったく分からなかったが、その頃の新道はまだガスが晴れていて斜里岳や下界も見渡せていたとのことであった。 東大が箱根駅伝を目指していることから、この若い人もすらっとしているのでいろいろ話していたら、やはりマラソンランナーでタイムは3時間半とのこと。 どうりであの新道を登ることにちっともためらわないな、と思った。 その後、清里町駅まで送って別れたが、温泉でのんびりしたにもかかわらず、彼はあと1時間程度駅で電車を待たねばならない。 こちらは、これから雌阿寒岳に行かねばならないので、そこまで付き合っていられなかったが、すがすがしい若者であった。ただし37歳と言っていたが。。。
感想
 斜里岳は沢登りということで、幌尻岳が糠平側の渡渉を避けた裏ルートを選択できたが、ここは沢登りがメインである。天気予報によれば、北海道のあちこちで集中豪雨に見舞われているようで、もしこの道東で集中豪雨であれば、とても沢歩きはできない。 幸い、天気は曇りで水嵩も例年通りの量であったかと思う。ただやはり滝の傍の濡れた箇所を登山靴で登るにはちょっと緊張する。 これが地下足袋、草鞋といった沢の装備であればなんということもないと思うが、そういうところは何カ所もないので、やはり登山靴ということになろう。 その分、十分気をつければ問題ない。登りで少々緊張したが、下りの渡渉ではこの沢伝いの渡渉も慣れてきたせいか面白くなってきた。 ご一緒したご夫婦の奥さんも楽しかったね、とのことでぜんぜん緊張したそぶりはない。女性の方が勇気があるんだな、と思った次第である。
 さて、道東のマッターホルンと呼ばれている斜里岳であるが、あの深田久弥氏もこう記している。

「斜里岳はかねてからその姿を写真で見て、私の憧れの山の一つであったが、初めてその実景に接したのは昭和34年8月下旬であった。
  ~ 中略 ~
しかし天が味方してくれたのはこの時きりであった。
  ~ 中略 ~
北方の斜里町からの展望も得られなかった。私は空しく5万分の一の地図を拡げて、斜里岳が北に向かって孔雀の尾のように展げている、目の荒い整斉な等高線を見ながら、この山の裾の大きさを想像するだけであった。
  ~ 中略 ~
頂上に立ったが、私たちを迎えたのは濃い霧でしかなかった。頂から少し下ったところにある粗末な小屋で、一時間余り天の御機嫌の直るのを待ったが、ついにその甲斐がなかった。」

 ということで、やはりここで晴れるのはなかなかないことで、眺望を楽しむにはよほど天気を選んで登るしかないのであろう。 内地から来て限られた期間しか滞在が許されない者にとってはそれは難しいことであるが、その分久しぶりに沢登りの楽しさを味わうことが出来たのがよかった。 また広々としてのんびりした清里町、宇宙展望台がある清里町の青空と緑の風景がいつまでも心に残っている。

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