登山公開講座
2012年10月24日
山岳ガイド協会の公開講座に参加しまして、今後の山登りに参考になったので報告します。
講座は2部構成で、前半が「低体温症」の話で後半がガイド協会理事の山登りの一般注意事項でした。
今後の山登りの参考になれば幸いです。
第1部「低体温症に気をつけよう」 講師 医師 金田正樹 氏
低体温症」はとても怖いもので我々も十分気を付けないといけないことを認識しました。
講演は3年前にトムラウシで7月に8名もの犠牲者を出した山岳事故で原因究明に参加されたお医者
で、事故の内容について詳しい説明がありました。以下、記憶に辿りながら列記します。
人間は36度を下回ると寒気、震えがくる。34度を下回ると判断できなくなり、非常に危険になる。
トムラウシの例では朝出発時は雨は特に本降りという程ではなく、
午後に晴れるという予報だったので出発したが、稜線に上ると風速が20m/sを超えていたようです。
このような風の中では立って歩くことは出来ず一行は木道を四つんばになって進んでいたようで、
2時間くらいしてひとりが具合悪くなり、全員1時間程度強風の中で休んでいたが、
その後歩き出す時に急に意識がなくなりその場で倒れる人が続出したとのこと。
雨で体が濡れている中、さらに強風で耐寒温度が下がり、1時間もじっとしていると血液の温度も下がり、
急に立ち上がった時にその低温の血液が脳に巡って脳の活動が停止したのではないか、とのことでした。
トムラウシの例では、早い人で2時間程度で低体温症で死亡したとのことでした。
講師によれば、冬の「乾式寒冷」よりも夏の「湿式寒冷」の方が低体温症に陥りやすいとのことです。
トムラウシでも朝の気温は10度程度だったが、雨と強風で実際の体感温度は-20度程度になったのではないか、とのこと。
冬の場合、登山者はそれなりの防寒具を身に付けているが、夏山の場合、急激な体感温度の変化についていけない、
寒さで判断力が鈍ってしまうとのことです。
遭難者のザックにはフリースや防寒具などが入っていたのですが、それらを使うことなく死亡したとのことでした。
トムラウシの場合はツアーだったので、休みの時もバラバラで、講師によれば風を避けるためお互い固まって休憩すればなんとかなったのではないか、とのことでした。
トムラウシの稜線はダダ広くて風をよける斜面などないようです。
助かった人は、低いハイ松の中で風を避けていたのが良かった,、との証言もあったとのことでした。
これまで山での死亡事故は「疲労凍死」ということで片づけられていたが、
低体温症についてはこれまであまり解明されていなかったのでそのように処理されていただけで、実際は低体温症による死亡が真の原因であったのではないかとのこと。
また中高年になると血管の収縮や震えなど寒さに対する身体の反応が鈍くなるので注意を要するとのことです。
最後に、本講座のまとめを下記に示します。
体温(直腸温)が35°C以下に下がったものを低体温症という。
症状: 36°C 寒気がする。
35°C 手足の動きが鈍く、震えが始まる。判断力が低下する。
34°C よろよろする。転倒する。震えが激しくなる。会話がにぶく、眠くなる。
意識状態が低下する。(ここが山中では限界)
33°C 歩行不能。感情がなくなる。刺激に反応しない。
30°C 錯乱状態になる。起立不能。筋肉が硬直する。意識を失う。
28°C 昏睡状態に。心房細動を起こし死に至る。